大国の底力(ベレン:ブラジル)

Category: 謎3rd 南米編

2008.08.14(木)

 きれいに沈む夕日を眺めるのこそ失敗したがここでやることはこれだけではなかった。

 到着した初日(11日)、私はサンルイで壊れた「キャリーパックの車輪」の修理屋を探して修理に出していたのだ・・・

 ホテルの人に聞いた1軒目では修理は出来ないと言われ、そこに紹介してもらったもう1軒に行ってみる。

 最初は無理といっていたが、私が彼らにジェスチャーで壊れているのは片輪で車輪の本体には異常がなく、あくまでもそれを覆っているカバーが破れただけなのでそれを何とかしたいと説明し、彼らが出来ないのなら自分でやるとゴムを買って接着剤を売っている所を聞いたら「それならば俺が」と請け負ってくれることになる。料金は25レアル(約2300円)、物価の高いブラジルとは言え、これだけの料金を取るならそれなりの修理をしてくれるだろう・・・

 ポイントは「車軸とプラスティック製のタイヤ本体は無傷であるということ、ただ、この先の事を考えるといずれにしてもこのまま使い続けるといつかはタイヤ本体も破損してしまうから応急処置でかまわないからその外枠を覆う物をつけてタイヤ本体を長持ちさせればいい」というのが私の考えだ。

 これが修理に出した「セニョール・セロの店」、本業は靴の修理。看板のエスペシャリスト(専門家)の字が期待を抱かせる。


 修理に出した私のキャリーパック、そしてセニョール・セロ



 この日と翌日は観光に精を出し、そして受け取り日の13日・・・

 午前中セロのショップに行ってみるとセロが笑顔で私を迎えてくれる。

 どうやらうまく直してくれたらしい・・・

 セロが私の鞄を軽快に転がす、これなら大丈・・・


 『んっ???』


 そう言えば車軸ごと変わっているが・・・


 私は鞄を逆さまにして車輪の部分をよく覗いて見る・・・


 『こっこれは・・・』


 修理直後の車輪



 見てみるともともと付いていた車輪は外され、新しいものに置き換わっている、ここまでは良くやったと言ってもいいかもしれない、だが・・・

 初めからついていた車輪の頑丈な車軸はなにやら「釘」に置き換わり、そしてブランコのように車輪はブラブラと遊んでしまっている・・・


 これでは・・・これでは・・・「修理ではなく改悪」だ・・・!!

 それに壊れた車輪は片側だけだったのによりによって両輪とも変えてしまうなんて・・・

 今は荷物が入っていないからいいが・・・荷物を入れたら多分”秒殺”で壊れてしまうだろう・・・


 私の目は涙目だ・・・

 だが・・・セニョール・セロの修理が終わってうれしそうな顔をみると・・・

 その場で苦情を言う気にもなれず・・・

 そしてショックの大きさからただうなずき、その場を後にするしかなくなっていた・・・


 それに今日私がやらなければいけないことはこれだけではない。

 ギアナ3カ国に入る前に、ここでCDを焼き、荷物を日本に送ろうと考えていたのだ。

 明日はアマゾンを越えるフェリーに乗るのでそれが出来るのは今日だけだ。


 日本語の読み書きが出来、DVDは焼ける私のホテルのパソコンは、CDを焼こうとすると何故かエラーになってしまうので、3枚ぐらいCDを無駄にした後、ホテルの目の前にあるネットショップに行くことにする。

 ここは快適だ、2枚焼く予定のCDのうちの一枚が簡単に焼ける。それまで散々苦労していたのが嘘のような速さだ。

 そして2枚目にとりかかろうとしたとき・・・


 「ボンッ!!」


 という大音響が外から聞こえてくる・・・


 ネットショップの女性店員は外を見て・・・急にパソコンの電源を落とし始める・・・


 『何事だ??』



 さらに外から「バチバチッ!!」っと言う音が・・・


 私も外に飛び出し・・・見てみると・・・




 電柱についているブレーカーから火花が・・・




 消火活動も効果無し、燃え続けている・・・



 これでは・・・これでは・・・仕方ない・・・


 だが・・・ただでさえ鞄の修理の失敗で落ち込んでいる今、こんなタイミングでこんな事が起こるなんてぇ~・・・・!!


 その後、復旧することなくネットショップはクローズ、おまけにホテルのネットも自動的にダウン。


 何とかCDを焼ける店を探して荷物を日本に発送したが・・・


 ツイてない・・・ツイて無さ過ぎる一日だ・・・




 明けて14日、出発日・・・


 昨晩鞄の事で色々思い悩んだが・・・セロのショップにせめて苦情だけでも言いに行こう、そしてできれば修理前の状態に戻してもらおうと考え直したので朝ホテルを出てセロのショップに行く。

 名刺には0800時オープンと書いてあったが実際のオープンは1000時、船の出港は1830時だが1630時には港に行かないといけないので時間は押し迫っている。

 セロに「これでは荷物を入れたらアウトだ」と言い、前の状態に戻してくれというと「それは出来ない」と・・・私はせめてそれなら車輪だけでも返してもらい、どこかで自力でと考え車輪を出してもらうと・・・


 壊れた車輪の亡骸・・・




 車軸はきれいに取り外され・・・



 どこにあるかもわからないそうだ・・・・


 まあいい、もう無理だろう・・・


 せめて前の状態にでもという希望は終わった・・・



 私があきらめて出て行こうとするとセロがこう言ってくる


 「分かった、直しなおすから5時間時間をくれ」


 と・・・

 私はフェリーの出発時間もあるから昼ごろまでにやってくれというとセロもこちらの状況を理解したらしく「じゃあ1200時」にということで了解を得る。



 私は一度ホテルに戻り、事の経緯を説明して「宿泊の半日延長」を申し出る。ここは船の出港に合わせて1800時まで半分の料金で部屋を使える事になっているのが荷物を全て出して鞄を修理に出している私にとっては幸いだが・・・

 鞄の修理がきちんとされてなかったら無駄金になる・・・


 1200時、セロのショップにいくと私の鞄の修理を丁度している所だ。

 セロはポパイのポーズをとって「強く直してやる」からとこちらにアピールしてくる。

 また1時間後にくるといい昼食をとって戻ると・・・





 『おおっ!』



 こんどの車軸はブラブラする釘ではない・・・しっかりとした太さを持つボルトが取り付けられている・・・


 修理に・・・修理に出した甲斐が・・・


 これならあった!


 と思わせる出来栄えだ・・・


 セニョール・セロのショップとその修理工場の中






 出発日の、時間のないこのタイミングで・・・私のクレームを聞き届け、そして完璧とまではいかないまでも応急処置としては申し分の無い修理をやってのけたこの小さなセニョール・セロという町工場・・・

 人種の坩堝といわれるこのブラジルの・・・

 その「底力の一端」がここに示された瞬間と言ってもいいだろう・・・




 これで私の心配事の一つは解消されたのだ・・・




 これはセニョール・セロの名刺



 セニョール・セロ・・・



 私は今、感謝の意を込めて、彼にこう伝えたい・・・






 「こういう修理が出来るのなら・・・」





 「何故最初からそうやらないのか・・・」





 と・・・






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